2025年05月12日

【コラム】公立学校の教員に残業代が支払われない理由とは?

公立教員の残業代についての記事のサムネ


 

教員をしている方や目指している方はもちろん、そうではない方も公立教員にいわゆる「残業代」が支払われないことをご存じの方も多いのではないでしょうか。公立学校教員の労働環境は過酷で、長時間労働を強いられることも少なくないにもかかわらず、なぜ公立学校教員には残業代が支払われないのでしょうか?

今回の記事では、教員の勤務時間の実態や、公立教員に残業代が支払われない理由などを解説します。

 

教員の勤務時間

まず、教員の勤務時間の実態はどれほどなのでしょうか。文部科学省が2016年以来6年ぶりに実施した「教員勤務実態調査(令和4年度)」によると、教員の1日当たりの学内勤務時間は、以下のとおりとなっています。

平成28年度の調査と比較すると減少傾向にあるものの、依然として長時間勤務の教員が多数いることがわかりました。国が残業の上限としている月45時間を超える、総在校等時間が週50時間を超過している教員は中学校で77.1%、小学校で64.5%でした。
 

職種別 教師の1日当たりの在校等時間(時間:分)

職種別 教師の1日当たりの在校等時間

 

教員は部活動の顧問を任されることも多く、始業前の朝や放課後、休日に行われる部活動に付き添うため、部活の時間外での残業も多いため、残業時間がどんどん増えていきます。

加えて、上記のデータは持ち帰りの仕事の時間を含んでいません。自宅でもパソコンを立ち上げて作業するなど、実際のところは、これよりも仕事に触れている時間が長い可能性も考えられるでしょう。

※参考:文部科学省「教員勤務実態調査(令和4年度)の集計(確定値)について」(PDF)

 

なぜ公立教員には残業代がない?

勤務時間は減少傾向にありつつも、いまだに教員の勤務実態は過酷です。それにも関わらず、公立学校の教員には残業代が支給されません。

公立学校の教員に残業代が支払われないのは、「給特法(公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法)」によって決められているためです。

給特法第3条第2項により、「教育職員」(公立学校教員など)は、時間外勤務手当および休日勤務手当=「残業代」が支払われることはありません。残業代の代わりに、「教職調整額」が支給される決まりになっています。

 

給特法とは?

給特法は、公立学校の教育職員に適用される法律であり、教育職員の給与や労働条件を定めた法律です。教育職員の仕事は自発性や創造性が必要とされ、また、勤務時間を単純に測定することが難しい業務です。その特殊性から、勤務時間の長短によって機械的に評価することは不適切と考えられ、給特法で給与や勤務条件について特例を定められています。

給特法の対象となる教育職員

  • 校長(園長を含む)
  • 副校長(副園長を含む)
  • 教頭
  • 主幹教諭
  • 指導教諭
  • 教諭
  • 養護教諭
  • 栄養教諭
  • 助教諭
  • 養護助教諭
  • 講師(常勤勤務の者および定年退職者等である短時間勤務者に限る)
  • 実習助手
  • 寄宿舎指導員

 

給特法が指す義務教育諸学校等

  • 小学校
  • 中学校
  • 義務教育学校
  • 高等学校
  • 中等教育学校
  • 特別支援学校
  • 幼稚園


前述の通り、給特法によって公立学校の教員には、時間外勤務手当や休日勤務手当などの残業手当が支払われないこととなっています。残業代を支給しないことを前提としているため、原則として教育職員に時間外勤務を命じることを給特法は禁止しています。

ただし、下記の勤務に限り、教育職員に時間外勤務を命じることができます。残業の内容を限定することで、労働時間が増えすぎないようにしようという意図が含まれています。

超過勤務の4項目

① 校外実習その他生徒の実習に関する業務
② 修学旅行その他学校の行事に関する業務
③ 職員会議に関する業務
④ 非常災害の場合、児童または生徒の指導に関し緊急の措置を必要とする場合その他やむを得ない場合に必要な業務
※給特法第6条第1項、公立の義務教育諸学校等の教育職員を正規の勤務時間を超えて勤務させる場合等の基準を定める政令


上記に該当しない、早朝の登校指導や入試業務、部活動などは、教員が自発的に行ったものとみなされ、勤務時間に換算されません。

 

教職調整額とは?

校長、副校長、教頭を除く教育職員には、残業手当を支給しない代わりに「教職調整額」が支給されることになっています。

教職調整額とは、教員の給与において、毎月、給料月額の4%が支給される手当のことです。勤務時間の長短を問わず、給与の4%が実質的に「固定残業代」として一律に支給されます(給特法第3条第1項)。

残業を命じることができるのは、あくまで例外的な上記4つの場合のみです。教職調整額により、通常通り残業代が支払われる私立教員と公立学校教員が公平な待遇を受けることができるとされています。

教職調整額の基準である「給料月額の4%」は、1966年当時の月平均超過勤務時間(約8時間)が基になっています。しかし、現代では、教員の労働時間は非常に長く、例外的な場合に加えて、イレギュラーな対応も頻繁に発生しています。教員はサービス残業を強いられている状況が続いているにも関わらず、1966年当時の4%に固定されているのは問題ではないかという声もあります。

 

教職調整額について、政府は2024年12月24日に増額を決定しました。現在の月給4%から2026年1月に5%に引き上げ、最終的には2030年度までに10%に増額することを目指しています。教職調整額の増額は約50年ぶりとなります。教員確保や教育の質向上には、待遇改善とともに働き方改革を進める必要があると、残業時間の3割減の目標も定められました。

 

私立学校を検討する手も

教員の長時間労働や人材不足が問題視されるようになり、現在では教員に対する働き方改革が進められています。ただ、働き方改革が進むのを待つばかりでは、労働環境を大きく改善できないのも事実です。公立学校の待遇に大きな不満がある場合、私立学校に転職することも検討してみてはいかがでしょうか?

給特法の規定が適用されるのは公立学校教員などに限られ、私立校の教員は対象外です。そもそも私立学校の教員は、学校側によって雇用されている通常の労働者であるため、労働基準法の規定が全面的に適用されます。そのため、私立学校であれば、会社員などと同様に時間外勤務手当、いわゆる残業代が支払われます。より良い環境を求めるのであれば、私立学校へ目を向けてみるのも一つの手段です。ただし、待遇は学校によって異なるため、転職する前に労働条件を十分に確認することが大切です。

 



この記事では、公立教員に残業代が支払われない理由について解説しました。

公立学校における教員の働き方改革は進められているとはいえ、残業代がないなどの待遇に不満を感じる方も少なくはないでしょう。より自分の希望に合った働き方を考えたい場合は、私立学校への就職・転職を検討してみてはいかがでしょうか?

通信制高校も私立の学校も多く、フレックス勤務や短時間勤務など教職員の働き方改革を進めている学校も多数あります。通信制高校の学校数・生徒数は増加傾向にあるため、教職員の需要は高いと言えます。

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